第3章 次世代の司令官

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アルバートは知らない。実はリュシアンがソフィアの王子だったということを。 ソフィアで大事件が起こり、エランツォを助ける為にリュシアンが現れた時、彼はナイト・スカイにやられて重傷を負っていた。その為、リュシアンの本当の正体を知っているのはエランツォ一人だけなのだ。 それを知らずに、アルバートはエランツォに聞く。リュシアンはまだ帰って来ないのか? と。 その度にエランツォは機嫌が悪くなった。ある時など、リュシアンの名前を聞いた瞬間に顔面に正拳突きを食らわせ、ふっ飛ばしたこともある。 アルバートがエランツォの前でリュシアンの名前を出さなくなるのは当然だろう。 「……リュシアン……君は帰ってこないわよ」 エランツォはリュシアンの正体がソフィアの王子であったことをアルバートやその他の人々には伝えていない。自分でも理由は分からないが、それを言ってしまうと何もかもが壊れてしまうような気がしたからだ。 しかし、リュシアンの正体を知っているエランツォは彼がもうここには戻ってこない事を知っている。噂ではリュシアンはソフィア王として即位したとも聞く。ソフィアの王がダイワークには帰ってこないだろう。 エランツォの暗い表情を見て、アルバートは口をつぐんだ。 彼としては本当は聞きたい。何かあったのか? と、しかしそれは野暮なような気がして聞けなかった。 リュシアンにはもう会えないと考えたアルバートはガックリと肩を落としてエランツォの執務室を出る。 そしてアルバートは思う。あのおいしい飯はもう二度と食えない。そして結局……酒の飲み比べでは一度も勝てなかったと。
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