第3章 次世代の司令官

8/12
前へ
/178ページ
次へ
ダイワークに限らず、艦隊司令官には類いまれな能力が要求される。それはそうだろう。司令官の指示ひとつでいったい何人の兵士の命が失われるか分かったものではない。 艦隊司令官にはそうそうなれるものでは無い。 普通であれば何十年もの下積みを経て階級も徐々に上がっていき、司令官になるのだ。もちろん司令官になれずに退役する者の方が圧倒的に多い。階級も中将以上の者がなる。 だから、ステファーノの目論見としては誰か現在の司令官が自分のところの副官を推薦しないだろうかと考えたのだ。順序から考えてそれが妥当だろう。 この行為には意味がある。何十年も下積みをして、何度も武勲をたててなるはずの艦隊司令官。そうそうなれるはずがない。だからと言っていつまでも空いた司令官の席を空席のままには出来ない。 この度のことは特別処置である。そうすることで現在の艦隊司令官の面目を保つつもりなのだ。 そうでもしないと……軍上層部が、誰それと決めて、簡単にその者が艦隊司令官になったのでは現在の司令官がおもしろくないはず…… 今回の軽はずみとも思える艦隊司令官候補募集には、ステファーノのそういう深い考えがあった…… だが、現在のダイワーク海軍にはそういうステファーノの深い考えが分からぬ者が若干二名いた。 アルバートとエランツォだ。 エランツォは19歳の公爵家の令嬢を艦隊司令官に推薦すると言うし、アルバートに至ってはどこの馬の骨とも分からない、自分をダイワーク海軍だと騙(カタ)る人間を探し出して艦隊司令官に推薦しようとしている。 おかしいだろう?アルバートは普通先に副官のマルスを推薦すべきでは無いのか? マルスは少し、性格的に司令官に向かないところもあるが、そういう時の為の副官だ。真面目で熱血漢のマルスには彼にあった副官をつければ将来的に立派な司令官になる可能性がある。 それをなぜ、その紅い獅子というおちゃらけた名前の男を捜させる!?ステファーノとしては理解不能だ。 ステファーノは思う。これは自分に対する嫌がらせではないのか? 仕方なく、ステファーノは次なる手を打つ。一般兵の募集の準備を始めたのだ。 現在の艦隊司令官の推薦を受けて、集まった者全てを未来の艦隊司令官候補として育成することは出来そうにない。
/178ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加