第3章 次世代の司令官

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有象無象達をふるいにかけるのだ。そして脱落した者も出来ればそれで終わりにするのでは無く、ダイワーク海軍に取り込もうというのだ。その為の一般兵の募集である。 はじめ、ステファーノがダイワークの艦隊司令官候補を募集した時には誰も、それを推薦する者はいなかった。 ダイワークは、ソフィア、ロレンスと並ぶ、海戦の強い国である。その世界に名だたるダイワークの艦隊司令官など、恐れ多くて誰も手を挙げなかったのだ。司令官が推薦したくても本人が嫌がれば、あまり無理強いは出来ない。 しかし、事情は変わった。エランツォは公爵家令嬢を、アルバートは海軍ですら無い者を艦隊司令官に推薦しようとしている。そうであれば、自分が推薦されても良いのでは無いかと思う者が多くいたのだ。 今度は我も我もと皆が手を挙げたが、ここからはステファーノの狙いが的中する。現在の艦隊司令官が余程の人物しか推薦しようとしなかったのだ。もし自分が推薦した人物が艦隊司令官として失敗しようものなら自分の評価も下がるだろう。自分は人を見る目が無いと言っているようなものだ。だから現在の艦隊司令官も慎重になる。 ステファーノの決めた、この艦隊司令官候補育成作戦は特別措置である。その為、期間も定められている。 これからずっと募集してしまえば軍としての秩序が保たれない。 能力があれば一兵卒がいきなり艦隊司令官になってしまう可能性があるからだ。それでは階級も何もかもが無意味になってしまう。 あと少しで艦隊司令官候補の推薦を受け付ける期限の日が来る。アルバートは必死に紅い獅子を捜した。捜索費はもちろん、全てアルバートのポケット・マネーである。アルバートの酔狂にダイワーク軍が金を出す訳が無い。 紅い獅子の正体は結局リュシアンだったのだろうと感づいているエランツォはアルバートを諫めた。 「アルバート。無駄なことは止めなさい。お金の無駄よ。見つかりっこないわ」 しかし、アルバートは言う。 「だめだ、エランツォ。俺は止めない。だって凄いじゃないか、自分の命を掛けてお前を救ったのだぞ」
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