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「なんだ、あの動きは!?あれが帆船の動きなのか!?」
ダイワーク海軍第十一艦隊タクト中将は驚愕する。
「いったいどこの国なのだ。我がダイワーク帝国に挑んでくる者は?」
横に立つ副官のメイサは青い顔で目の前の船団を睨んでいるばかりだ。
そんな副官の様子を見て司令官タクトは思う。頼りない男だ……
副官になるまでは良かった。腕っぷしも強く、度胸もある……そう思っていた。しかし、それは一兵卒のような、なんの責任も持たぬ時だけの話であったようだ。
ひとたび副官としてこの男を取り立ててからは欠点ばかりが目に付く……そしていつも思う……
シオン大佐だったらこんなことは無かっただろう……
自分の元副官だったシオン大佐。彼はいつも何を考えているか分からなかった。しかし、誰よりも勇敢であった。誰よりも機転が利いた。そして誰よりもその能力は優れていた。
結局、自分は若い彼に嫉妬をしていたのかもしれない。
重大事件対策室という訳の分からないものを立ち上げてシオンをスカウトに来た第七艦隊の副官ザック。
私は彼に言ったものだ。
「彼は扱いにくいよ。大丈夫かね?」
それに対して第七艦隊の副官は無表情に答えた。
「彼には、普通の人材100人以上の価値がある」 と。
タクトは思う。我が艦隊は全滅するだろう。外交の為に他国に行った帰りだ。そこをこんな大船団に囲まれてはどうしようもない。
周りのどこを見ても敵の船なのだ。逃げ場もない。
シオン大佐がいればどうにか出来たのだろうか?
「ど、どういたしましょう?提督」
副官のメイサが不安そうに聞いてくる。
どうしましょう? か……そういえば、この男が副官になってからは「どうしましょう?」以外の言葉を聞いたことがない。
しかし、だからと言って……突然バイオリンを弾かれても困るがな。
「ふふふ……」
こんな時ではあるが、タクトは含み笑いをする。
「提督?」
「どうしたもこうしたもあるものか。逃げ場はない。しかし、敵が我が艦隊!そしてダイワークに挑んできていることは明白!」
「は、はい」
「後(ノチ)のダイワークの為に、少しでも敵の戦力を減らすぞ!」
タクトは目の前の大船団を睨み据えて言う。
「総員配置に付け!!ダイワークの名に恥じぬ戦いをするぞ!!目の前の輩どもにダイワークの強さを見せつけてやれ!!」
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