第2章 世界の四強

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この時代、街を行く者に「最も強い国はどこか?」 と問えば、三者三様の答えが返ってくるだろう。 建国が古く由緒正しい国ソフィアが最も強い国であると答える者もいれば、それに異を唱える者もいるはずだ。 ソフィアは国が揺れている。今はおさまったかもしれないが、つい最近までお家騒動で内政はボロボロである。そこへいくとロレンス王国は王を中心に堅実で強固である。たまに殺戮王ローリアスのような狂っているとしか思えない狂王を生み出すが、それが無ければ一番バランスも取れているロレンスが最も強い国だ。 と言う者も多い。 すると他の者がこういうかも知れない。 「もっとも強い国は間違いなくダイワーク帝国である」 国も古く徐々にその版図を広げ、軍事から内政に至るまで最も充実している。 それにあの国には良い人材が多い。 …… …………すると少しお調子者がこう言うかもしれない。 「この世で最も強い国はエムアド帝国である。なぜなら、あそこには……皇帝シスアドがいる」 しかし、世界の三強、いや四強? の一つと言われるダイワーク帝国に緊急事態が発生していた。 国を出た船が帰ってこないのだ。最初に帰って来なかった船は普通の民間船であった。そして捜索に出かけた船も戻って来ない。理由は分からない。 すぐにダイワーク海軍に報告が来る。 軍はすぐに対応することに決める。このあたりの決断が早いのはダイワークのお国柄の良いところである。 第六艦隊の艦隊司令官であるサプラがすぐに艦隊を引き連れて原因調査に向かった。 サプラは齢60歳の堅実な司令官である。戦術・戦略に優れ、ダイワーク海軍内と言わず、ダイワーク国内で彼を知らない者はいない。艦隊総司令官のステファーノも一目置く相手である。 本来は行方不明になった民間船を探すような任務にあたるべき人物では無い。 しかし、この時期、たまたま他に人がいない為に彼のような有能な人物が民間船捜索の任務にあたることとなった。 ダイワーク帝国海軍が現在、人手不足なのには理由がある。 数か月前のロレンス王国の陰謀によるものだ。それにより第四艦隊の司令官と副官が暗殺された。そしてそれより数か月前にはミゼルクの裏切りにより第二艦隊の司令官も空席になっている。 その為に、ダイワークにこの人ありと言われるサプラのような人物が任務にあたることとなったのだ。
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