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電話越しの宇野の声は、感情を抑えたものだったが、俺に劣らず、苛立っているのはわかる。
子供の頃からずっと一緒にいるのだから。
『報告が遅くなったのですが・・・これは、あちらの家の話なので・・・』
それはそうだけれど。
そうだけれどっ!
要が傷つかない方法があったんじゃないか。
俺は、何もできなかったことが、悔しかった。
『とりあえず、亮平さんたちが住んでた前の家に避難させました。』
あの家か。
俺が転校するまで、家族全員で住んでた家。
俺の愚かな行為で、家族がバラバラになってしまった。
その家に、今、要がいる。
『それに、彼には鴻上くんがいます。』
・・・そうだ。
あいつは、一人じゃない。
『ただ、あの部屋、彼が一人だと広すぎるようで、なんだか居心地が悪そうなので、近々、別の部屋を探さないといけないかもしれません。』
「わかった。できるだけのことは、してやってくれ。」
『・・・はい。』
俺が傍にいてやったら。
少しは違ったのだろうか?
・・・いや、俺がいたところで、何も変わらない。
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