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スマホを耳にあてながら、俺はイライラしていた。
柊翔のヤツ、どこかのポケットにいれてるみたいで、音声がくぐもって聞こえる。
唯一聞き取れるのが、柊翔の言葉だけ。
ただ、要の悲痛な声が聞こえてくるたびに、俺はなぜ、ここに、自分の寮の部屋にいるんだろう、と拳を握りしめる。
『おじさん・・・おじさんの中で、要が一番になってないんでしょ。だったら・・・もう、放っておいてやって。』
柊翔の言葉を要がどんな思いで聞いているか。
それを考えただけで、胸が痛くなる。
『・・・・』
『宇野さん、要のこれからのことですけど、この人から、ちゃんと生活費もろもろのお金もらってください。こんなんでも、一応、保護者なわけですし。おじさん、それぐらいの面倒、みても当たり前でしょ。』
『・・・・』
『それすら放棄するつもりなら。』
ようやく画面が明るくなった。
「どうも。」
久しぶりに見る獅子倉のおじさんは、少し痩せていて、目には少し怯えが見えた。
『き、君はっ!?』
だからって、要を悲しませる相手に容赦するつもりはない。
たとえ、それが要の父親であっても。
「ご無沙汰してます。・・・獅子倉さん・・・あの時は、ご迷惑をおかけしました。」
『は、馳川くん・・・』
「宇野からも話は聞いてます・・・獅子倉さんが思うように生きるという選択をしたのなら、要も自由にしてもいいはずですよね。当面は、こちらで世話をさせてもらいますけど、要も、いつまでも、この状態は嫌だろうし。」
『・・・しかし。』
「あなたには選択権はないんですよ?」
『おじさん、まさか、要を家に連れ戻そうとか、思ってるわけじゃないだろうね。これ以上、要を苦しめるんだったら。』
今まで聞いたことのないくらい、柊翔の冷ややかな声。
『俺も亮平も、あんたを許さないから。』
柊翔にも、意外に残酷な一面があるんだ、と思うと、思わずニヤリと口元を歪めた。
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