8人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「え、ベンチの下に潜るの?」
「そうそう。このくらいのスペースがあれば、いけると思うんだけど」
友人の1人がベンチに腰掛け、別の友人がベンチの下に潜り、Wさんがカメラを構える。
服を泥だらけにしながら、ああでもないこうでもないと構図を考え、納得のいく写真を数枚撮影した。
写真が現像できたら学校に持っていく事を約束し、Wさん達は公園を後にした。
4日後、現像出来た写真を持って学校へ行くと、昼休みを利用して友人達と一緒に写真を確認した。
高台から見下ろした街を背景に撮った写真、おどける友人達を撮った写真。
1枚1枚めくっていく。
もちろん、ベンチに座った友人の「なんちゃって心霊写真」もあった。
「あー、これは明らかに人がいるって分かっちゃうだろ」
「これもダメかなー」
「お、コレなんかいいんじゃないか?」
そして、次の写真をめくった瞬間、Wさんの手が止まった。
そこには、Wさんが撮影した覚えのない写真が存在していたのだ。
「なあ、これって誰が撮ったんだ?」
ベンチに座る友人と、ベンチの下に潜り込もうとしている友人、位置を指示している友人……そして、カメラを構えるWさん。
あの場には自分を含めて4人しかいなかった。
撮ろうとしているモノがモノだけに、周囲に人がいないのは何度も確かめた。
ならば、今目の前にある写真は……一体誰が撮影したものだと言うのだろう?
Wさんの全身にザッと鳥肌がたち、弾かれたように手にしていた写真を机の上に放り出した。
「結局、撮影した写真は全部、学校の焼却炉で燃やしてしまったそうです。その後、Wさんにも友人にも特に何事も起こらなかったそうですが、心霊関係に対する熱はすっかり冷めてしまったと言っていました。以上が、私がWさんから聞いた話です」
マイクに向かって話し終えると、私はミュートボタンを押してBGMの音量を上げた。
了
最初のコメントを投稿しよう!