怪談DJ『心霊写真』

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今日も今日とて、相方のいないうちにインターネットラジオの怪談配信を。 パソコンの前で1時間もしゃべっているとそれなりに疲れてくるし、大体そこら辺で10分ほどの休憩を入れるようにしている。 マイクをミュートにし、休憩タイム用のBGMを流して、その間にトイレとニコチン補給と新しい飲み物を用意する。 スマホで時間を確認しながら所用を済ませ、パソコンの前に戻る。 BGMのボリュームを下げ、マイクのミュートを解除する。 アイスコーヒーを一口含んでから、マイクに向かって話し始める。 「この話は、自治会で同じ役員をしていたWさんという男性から聞いた話なんですが……」 頭の引き出しの中にしまい込んでいた話の内容を思い出しながら口を動かす。 Wさんが中学生だった頃、世の中は一大心霊ブームだった。 TVではお昼から心霊関係の番組を放送し、本屋さんには大量の心霊系雑誌が並んだ。 中でも素人から投稿された心霊写真は非常に人気があった。 学校でも友人が持ち込んだ雑誌を囲み、ああでもないこうでもないと心霊談義に花を咲かせていた。 やがて、中学生らしい冒険心と悪戯心から「自分達で心霊写真を撮ろう」という話になっていった。 とはいっても、心霊写真なんぞ簡単に撮影できるはずがない。 そこでWさん達がとった行動は、「心霊写真を『作る』」ことだった。 うまくすれば、投稿した写真が雑誌に掲載され有名になれるかもしれない。 それどころか、謝礼を貰えるかもしれない。 そんな淡い望みを抱いて、Wさんと友人3人で行動を開始した。 休日にWさんはお父さんのカメラを持ち出すと、約束していた公園へと向かった。 この公園は山の中腹に建てられた戦国時代の小城の跡で、鬱蒼とした樹々に囲まれた、昼間でも薄暗い場所だ。 地元では「心霊スポット」として知られており、夏になると肝試しに訪れる若者達も多かった。 ここならばもしかしたら、本物の心霊写真が撮れるかもしれないという目論見もあった。 自転車で公園に乗り付けると、友人3人はすでに到着しており、先に色々と場所を選んでいたようだ。 やってきたWさんを案内して、公園の奥へと進んでいった。 そこには街を一望できる遊歩道の一角で、休憩用のコンクリート製のベンチが設置してあり、反対側の柵の向こうは急斜面になっている。 「ここでさ、ベンチに座ってるヤツの足を下から手が握ってる感じに撮れないかな?」
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