徐々に増える秘密

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 土下座学生から無事に解放され、家に帰宅をして暇つぶしにゲームをしようとした。しかしクリア済みのゲームが沢山あり、仕方が無いので格闘ゲームをしようと漁る。すると僕が持っていないRPGゲームを発見。こんなゲーム持ってたっけ?  まぁ、知らずに中古で買ったのだろうと解釈してカセットをゲーム機に挿入しようとする。だが、カセットの裏には佐藤とマジックで書かれているのを発見した。 「――ッ。しまったああああ!!」  これは……借りパクと言われる犯罪だ。知らず知らず僕は犯罪に手を染めていたらしい。カセットを返したくても手掛かりの名前が佐藤では候補が多過ぎてわからない。自分の心臓を強く握られるかのような苦しさが僕を襲う。辛い、申し訳ない、情けない。様々な感情が渦巻きながら僕の身体を容赦な襲う。  このようなことが許されるのだろうか。いや、許されるわけがない。僕は自分を恥ずる。同時に僕を生んでくれた母親に、そして汗水掻いて朝から夜まで働いて稼いでくれた現金で僕を育ててくれた父親に心の底から謝った。  いや、心で謝っていては駄目だ。悪い事をしたら直接本人たちに伝えるのが道理であろう。自分のしたことの重大さを感じてなのか、自分の両手が震えている。自らが犯した罪の重さを理解したのだろう。無理はない。十六という年齢で借りパクという罪の重さに触れているのだ。 「いや、待てよ。罪を背負うのが僕だけならまだ良い。しかしこのことを警察に伝えると、両親と妹はこの先ずっと後ろ指を指されて生きて行かなくてはならない」  駄目だ。そんなことは許されない。悩みに悩んで僕は一つの提案が浮かんだ。それはこのことを誰にも伝えずにいようという悪に染まった考えである。しかしながら、僕はそれしか手段が浮かばない。残り五十年以上になるのか、はたまたそれ以下になるかわからないが死ぬまで墓場まで持っていこう。  決断すると背中に見えない重圧が感じられた。……これをずっと背負って生きて行くのだと思うと苦しくてとても辛い。だが自分で決めた事なのだ。甘えてはいけない。罪の重さから逃げてはいけない。  僕は佐藤と書かれたカセットを見つからぬようにベットの下に隠してある段ボールの中へしまう。段ボールの中には鉛筆や消しゴムに雑貨用具が収納されている。これらは僕の罪の証。気付かずに借りたままの品だ。――また僕の罪が増えてしまった。
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