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ねえ、あなた。聞いてほしいんだけど。 美由紀が語り始めた。 あのね、私、結婚しようと思うの。同級だった高橋君。覚えてる? 覚えてるとも。高橋はちゃんと頭でうちの大学に入ってきた秀才だ。 何をどう間違ったのか漕艇部に入ったが、あまり勝てなかった。 インカレも3年連続で予選落ちだったな、確か。 あんな奴か、って思ってるでしょ。 図星だ。 でも、卒業後は彼なりに頑張ってね、税理士の資格もとって、今は開業したんだよ。 私と隆のことも心配してくれて色々相談に乗ってくれてる。 へ~え。そりゃ下心があるからだろうよ。 あなたとはもちろん比べられないけど、一人って大変なのよ。 少し疲れちゃった。 あなたのことは今でも大好き。本当よ。高橋君への気持ちとは全然違う。 でも・・・でも・・・将来を考えたら不安で。 私、働いたことないし。 美由紀は静かに泣いている。 そうだな。卒業と同時に結婚して、家に入ったからな。 それに、俺はお前に何もしてやれない。何も言えない。 だが高橋はあまりいい趣味とは言えないなぁ。 幸せに、とはお世辞にも言えない。でも、お前を縛ることもできない。 7年、長かったよな。ありがとう。 俺は左手の薬指から結婚指輪を外した。
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