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隆~、話終わった。こっち来て
隆が無言で階段を降りてきた。ももも一緒だ。どうやら一緒に遊んでいたらしい。
じゃ、パパを送ろうか。
うん。
隆がキッチンへ行き、冷蔵庫から先ほどの創作物を取り出した。
茄子に割り箸を4つに切って刺してある。精霊牛だ。今年は縦縞がつけられている。
牛だぞ。うりぼうじゃないぞ。どうも隆は認識不足だな。
おまけにきゅうりの精霊馬まで作ったらしい。行くのか帰るのかわからないだろ、それじゃ。
焙烙皿(ほうろくざら)にオガラをもった美由紀と隆が門の前に出てくる。
夕闇が迫っている。
美由紀が焙烙皿にオガラを入れて地面に置く。きゅうりの馬と茄子のうりぼうも一緒に置かれる。美由紀がチャッカマンでオガラに火をつけた。
ももが俺をキラキラした瞳で見つめ、パパまた来年でしね。そんなことを言っている。
ああ、もも、ママと隆を守ってくれよ。
ガッテンでし、パパ。
最後に声をかけるのがももというところが情けないが、頼むぞ、ともう一度言ったところで、視界がぐにゃりとゆがみ、だんだん隆や美由紀、ももが薄れていった。
8月15日の黄昏どき、空には無数の白い小さな発光体が飛び交い、そして闇に飲まれるように消えた。
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