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リビングを見た。壁にはオールが飾られている。同じフレームに入れられた写真がセンスよく、そのオールの下に掛けられている。 そのほかにも数々の盾、トロフィー、写真。 俺は高校、大学と漕艇部にいた。大学ではエイト(8人乗り)。 インターハイ、インカレ、国体、ライバル校との対校戦。 大学でマネージャーだった美由紀と出会い、そのまま結婚した。 美由紀は家に有閑層の奥さんたちを呼んで、フラワーアレンジメントを教えている。 終わると手作りのケーキと紅茶でもてなす。 このときのカップとソーサー、皿は全て手描きのマイセン。 世田谷という場所柄、かなり強気に設定してある月謝も簡単に支払ってもらえるらしい。 黒目がちの美貌とアンティークな洋館住まい(俺のオヤジの遺産だ)のおかげで、度々高級女性雑誌にサロネーゼとして紹介されている。 隆、ごはん、下りていらっしゃい。あなたもいただきましょう。 俺に向かって美由紀が笑いかける。 思い出に浸っていた俺は、いつもどおり自分の椅子に座った。
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