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……好き、か。
あの夫の子供だと思うと、愛せないのも事実。
私の手にふれる、夫とは似ても似つかない、くしゃくしゃの天パの髪。
義母はそれも不満らしく、誰に似たんだかといつもこぼしている。
「好き、だよ」
ぎこちなく笑って嘘を吐くと、公紀の顔がみるみるうちに笑顔になった。
久しぶりに見る、公紀の笑顔。
その顔は薄くしか笑わない、夫とはまったく似てなくて。
まるでこれは、……高校生のときいつも見つめてた、あの笑顔。
ああ、そうか。
この子は。
急に目の前に立つ公紀が愛おしくなった。
……私はいままで、いったいなにをしていたんだろう。
公紀のためにも、私がちゃんとしなきゃ。
墓まで持っていかなければいけない秘密は、私に生きる希望を与えてくれた。
【終】
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