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尚人とは、由佳の恋人である。
心なしか声も上ずっているように感じてモヤモヤとしていたのだが、ある日、由佳をそっちのけで2人が趣味の話で盛り上がってしまった。
少し前から弥生の尚人に対する態度に違和感を覚えていた由佳は、悟られまいと必死に冷静を装っていた。
その時だった。
「あっ!ごめんごめん由佳!置いてきぼりだったねー。話変えよっか尚人君?」
不意にこちらに向いて、片方の口の端を吊り上げながら、勝ち誇ったような笑顔で弥生が言ったのだ。
それも、尚人の肩に触れながら。
その瞬間、由佳の心をものすごい不快感が埋め尽くし、そして確信した。
弥生は、尚人に好意を抱いている。それも特別な。
このまま弥生を尚人に引きあわせ続けたら、どんどん弥生の態度はエスカレートしていくかもしれない。
もちろん尚人がそんな事で揺らいだりする事はないだろうが、目の前で堂々と恋人にアプローチされるのを黙って見ていられるほど、由佳の心は広くない。
それとなく、自然に尚人と会わせないようにしていった。
それを感じたのか、弥生と遊ぶと弥生の口から尚人の近況を訊かれる事が増えていた。
由佳はなるべく平静を装いながら言葉を濁し、あまり詳しく話さないようにしていた。
~泊まりに来るなら、写真とか見られたりするかもしれないな。。。~
ぼんやりそんな事を考えていた。
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