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女神の部屋の前に到着すると、早速メイドはそのドアをノックしつつ、中へ呼び掛ける。
「めがみさま、おはよう、ございます。あさごはん、でき、ました」
数秒ほどその場で返事を待つが、無音の時間が続くのみ。
もちろん、反応がなかった場合の対処法も弟から教わっている。メイドは弟より授かったマスターキーを用いて、扉を開いた。
「めがみさま、しつれい、します」
誰かが見ているというわけでもないが、ここでもきちんと頭を下げながら挨拶をして、入室する。
シンプルな造りだったゲストルームは、完全に女神の好みへと模様替えがなされており、全体的に明るい印象の色使い。ぬいぐるみがやたら多いのと、トランプやルービックキューブ、知恵の輪なども多数見受けられる。
肝心の女神は、ベッドの上で未だぐっすりと眠っていた。かなり寝相が悪いらしく、掛け布団は半分以上がベッドから飛び出ていた。
「めがみさま、おはよう、ございます」
そんな女神の近くへ寄って、再び声を掛ける。
だがまるで起きる気配もなく、メイドが軽く肩を揺さぶっても同様だ。
「しつれい、します」
仕方がないので、メイドは寝たままの女神を抱えて起こし、そのまま着替えさせ始めた。
とりあえず上の服を脱がせると、ちょうど女神も目を覚ましたようだ。
「ん……あら、小娘じゃない……おはよ」
「めがみさま、おはよう、ございます」
半覚醒で眠気眼を擦る女神に挨拶しつつ、メイドはお召替えを続行する。
眠いからなのかは定かではないが、女神も特に疑問を持たずされるがままに着替えさせられる。
こうして寝間着から部屋着に衣装チェンジし、寝癖も整え終えると、早速下へ向かうのだ。
「んー……なんかだるい。小娘、連れてってー」
「はい、わかり、ました、めがみさま」
メイドは女神をおんぶして、部屋をあとにする。
それからトイレに寄って(流石にメイドは連れて行くだけで個室の前で待機)顔を洗って、そしてまた女神を背負ってダイニングへ向かう。
ここまでの流れはかなり大雑把なものなので、女神は朝食を摂って完全に目が覚めたあと、自らまた身嗜みを整えるのだが、だからと言ってメイドが雑に仕事をしているわけではないために文句は言わない。
ここまでやってダイニングへ到着したあとでも、未だに魔王と弟は姿を見せていないことが多いのだ。
今回もどうやらそのパターンだったらしい。
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