LV11 花と其之他の観察日記

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そんなわけで、途中昼食を挟んでまた掃除……洗濯物の取り込みやそれを畳む仕事も加わるが、あまり代わり映えしないために割愛。 掃除の最中に魔王に絡まれたり、その魔王の顔面にゴキブリが飛んで襲い掛かったり、それに驚いた魔王が転倒したり、魔王の指示でゴキブリを殺そうとしたメイドがゴキブリを魔王ごとモップで叩き潰したりしていたけれど、割愛。 ちなみに魔王はそのまま気を失って、少なくとも日が落ちても目を覚まさなかった。 「ねえさま、しつれい、します」 まるで死んだように眠る魔王の自室に、メイドは足を踏み入れた。 午後7時はバスタイムである。ろくに風呂に入ろうとしない魔王を風呂に入れるのも、弟から授かったメイドの大事な仕事の一つ。そしてそれは、魔王本人の意識がなかろうとも毎日同じ時間に遂行されるらしいということが、今日判明した。 魔王のパジャマと替えの下着を用意し、眠る魔王を抱え上げて風呂場へ向かう。 脱衣所にて器用に服を脱がし、そして自分も一糸纏わぬ姿となり、脱いだ衣服を洗濯機に放り込んで、ようやく浴室の中へ。 手際よくぐったりした魔王の全身を隅々まで念入りに洗っていく。先ほどまでうなされていた魔王の表情も、どこか穏やかなものになっている気がする。 そうして全身の汚れを落としたまではいいものの、困ったことがひとつ。 このままでは魔王を湯船に浸けることができないのだ。意識のない魔王を湯船に入れればそのまま沈んでいくであろうことはメイドにも予想できるし、かと言ってこのまま浴場の床に放置しておけば風邪を引いてしまうかもしれない。 困り果てた上に、メイドは魔王の体がくの字になるように、湯船の淵に引っ掛けた。これで顔はお湯に浸かる心配はないが、腰までは湯船に浸っているので体も冷えない。ほぼほぼ半身浴である。 強いて問題点を挙げるとするならば、絵面が軽くショッキングかつホラーであることなのだが、メイドはそれを全く気にせず自分の体を洗い始めた。 かくしてメイドは、本日も無事に魔王のバスタイムという重要任務をやり遂げたのである。
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