LV1 嗚呼、素晴らしき堕楽園

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何分掛かったかわからないが、これでようやく長い髪を洗い始めることができる。 切るのが面倒で放置していたために腰ほどの長さになってしまったのだが、ここまでくると洗うのが面倒である。 まずシャンプーを泡立てるのが面倒。 「ふぁー……」 と、思わず気の抜けた溜め息をついてしまうほど。 そしてそれを全体に浸透させていく。ただし、その手つきは女性と思えぬほど雑だった。 「あぁー……疲れる。こういう時男は楽だよな……次生まれ変わるなら男になりたい……ただしイケメンに限る」 たかだか髪を洗う程度で『次に生まれ変わるなら』という話題を出したのは彼女くらいのものだろう。 あまりにもくだらなく、あまりにも大袈裟すぎる。 やっとの事で髪を洗い終え、綺麗さっぱり泡を流すと、ようやく湯船に浸かることができる。 この時点で、魔王はフラフラになっていた。 「あぁぁぁ……気持ちいいわぁ。命の洗濯とはよく言ったモンだ」 大人三人が余裕で浸かれる浴槽は、思いっきり体を伸ばしてくつろぐことができる。 魔王でなくとも、きっと似たようなリアクションをすることだろう。最高の贅沢というやつだ。 ちなみに魔王は、右足から風呂に入る派。 「はぁぁぁ……」 水中で体の力を抜いて、思いっきり伸びをする。 そして体の芯から温まる心地よい感覚が、優しく魔王を包み込む。 完全にリラックスモードの魔王の瞼は、徐々に重くなっていった。 「ふぁぁぁ……」 うつらうつらしながら、大きな欠伸をひとつ。 昨晩は徹夜でゲームをしていた魔王の眠気が、ここにきてどっと襲い掛かる。 しかし、疲れたし気持ちいいしもうどうでもいいやー、となっている魔王はその眠気に一切抵抗することなく、静かに夢の中へと落ちていった。 …………
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