LV12 砂浜には獣が現れる

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沈んだ魔王を即座に救出し、そのままメイドたちの待つパラソルへ向かう弟。 パラソルの下に敷いたシートの上に魔王を寝かせ、ようやく一息ついた。 「準備運動もさせずに慣れない水中に連れ出したのがいけなかったか……」 「あ゛あ゛あ゛あ゛……!? 足がッ、足がァァァ……!」 足を押さえながらぴくぴく震える魔王は、苦悶の表情を浮かべている。足を攣った経験があまりないらしい。 少しでも痛みを和らげられればと、弟は魔王にマッサージを施してやることにした。 「ここか? ここが痛ぇのか? ええ?」 「いッ……!? ってぇなバカ何しやがんだ! もっと加減しろや童貞野郎!」 「そうかまだ足りねぇか」 「ギャアアアア! やめろォォォォォ!!」 魔王の暴言には容赦なくマッサージと言う名の報復を与える。 断末魔がビーチに響き渡り、一気に視線がこちらへ集中するが、それには弟も気づいていなかった。 「くっ……穢れの塊の穢れた声が僕の耳を汚染する……ただでさえ騒がしい場所なのに、なんで静かにできないんだ」 「お、お前も回復したか。お前は遊びに行かねーのか」 「いや、無理……このパラソルの影から一歩でも出たら多分吐く」 「よしわかった、お前は絶対に動くなよ」 ぐったりとして何も言わなくなった魔王のマッサージを中断して、弟は勇者と言葉を交わす。 それこそ蹲ってはいなかったものの、未だに顔色の優れない勇者は体操座りで、シートのギリギリ端にちょこんと座っていた。魔王と出来る限り距離を置くためである。 「ならメイド。お前はどうする? 遊びに行っててもいいが」 「いえ、わたし、は、ここに、います。うみ、あそび、わかり、ません、から」 パラソルを支えるメイドに話を振ってみたが、きっぱり断られてしまった。せっかく水着があるのに泳がないのはもったいない……と思いはしたが、本人がここにいると言うのだから仕方がない。 その時、ゆらりと上半身を起こした魔王は、波打ち際に視線を向けると、嫌いな芸能人がテレビに映った時のように表情を顰めた。 そして、ゆっくりとした動作で立ち上がる。 「おいドブ雌……なら私が海での遊びってやつを教えてやらァ。ちょっと着いて来い」 「はい、わかり、ました、ねえさま」 そして、メイドを伴ってこの場を後にした。 弟は特に何も言うことなく、メイドも羽目を外せるなら、とその後ろ姿を見送ったのだった。
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