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歩けば歩くほどに、どんどん人の姿が見えなくなっていく。
それは当然で、遊泳区域から外れたところの岩影までやってきていたからである。
「この辺まで来ればいいかな……?」
「え? ほんとにここなの? なんにもなくてつまんないところね」
きょろきょろ辺りを見回しながら女神の漏らした感想通り、がらんとして寂しい場所である。
当然、女神の期待したような「楽しいこと」などなく、肩をがっくり落として露骨に残念がった。
「ねぇ、あっちに戻らない? 私、なんだかカキ氷が食べたくなってきちゃったから奢りなさいよ」
「えぇ……つれないなぁ」
「そーそー、何もなくたって……いや、何もないからこそ楽しいことできるってこともあるんだぜ?」
「ま、もうちょい俺らに付き合ってよ」
引き返そうとする女神を、必死で引き止める三人組。進行方向を遮り、女神の移動を妨害する。
その説得に少し興味を掻き立てられた女神は、カキ氷を我慢することにしたのだ。
「んじゃ、早くその楽しいことやりましょ。これ以上私を待たせたら許さないんだから」
「そうこなくっちゃな!」
両手を腰に当て、普段と変わらない上から目線で言い放つ。
その言に、三人組のテンションは急上昇だ。
女神本人の承認を得たことで、その箍を外した三人は、女神の美しい肢体へとその手を伸ばす。
「えっ!? ちょ、ちょっと、いきなりそんな、さ、触るの!?」
「いいじゃんいいじゃん減るもんじゃないし」
「そうそう! こんなのは序の口だって!」
「うわすげぇ、すべすべムチムチだ……!」
先ずはその腕、そして足を触り始める三人。
ところどころ褒めながらなので、それに関しては悪くない……と思っていると同時に、いくらイケメンとは言え、出会った直後のスキンシップに困惑を隠し切れない。若干の恐怖さえ感じつつある。
「ちょ……もう、やめ……」
涙で瞳の潤いが増す女神は、ほんの少しの抵抗すらできない。
単純な筋力差もそうだが、初めてのことに対する戸惑いと恐ろしさという精神面の問題もあり、体が強張って動かなくなってしまったのだ。
「じゃ、じゃあそろそろ……」
とうとう我慢できなくなったか、ある一人が女神の水着へ手を伸ばした。
女神は声も出すことができず、恐ろしさを軽減させようと、ぎゅっと目を瞑る……その時だ。
「ちょっと待てやコラァァァァァァッ!!」
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