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「けっ、所詮は顔だけの甲斐性無し共か。少しは期待していたが、私に釣り合う男じゃなかったな。その顔すらウチの居候に負けてるし」
軽蔑の眼差しで走り去る三人組を見送りつつ、魔王は呆れたような口調で呟いた。
そして今度はメイドの方へと向き直って、言葉を掛ける。
「とまあ、今回は失敗したが、今のが逆ナンってやつだ。これでまた一つ賢くなったなドブ雌」
「はい、ありがとう、ございます、ねえさま」
明らかに間違った知識をメイドに教え込む魔王。
しかしその間違いを訂正する者はこの場におらず、メイドはそれを真に受けて深々と頭を下げ、礼の言葉を述べたのだった。
「しっかしよぉー、やっぱ納得いかねぇわ。なんでこのゴミなんかナンパしようって気になんだ? 血迷ったか? 大体この無駄にでけぇ乳袋のなにがそんなにいいのかさっぱり理解できねー。要するに脂肪の塊じゃねぇかコレ。脂じゃねぇかこんなもん。こんなギトギトでこびりついたらしつこそうなモン詰まった袋のなにがいいんだよ、あぁ?」
と、言いながら女神の豊満なバストを右手で触り、下から揺らす魔王。
いつものように憎まれ口は絶好調で、その行為と相まって煽り効果は非常に高いと思われる。
……が、女神は俯いたままで、一言も発することはない。
「ほら言ってみろよ、私は大量のアブラを胸に蓄えて歩く生きた給油機ですと。そう言って土下座でもしたら今回の件を水に流してやることを考えてやってもいいぜ?」
それをいいことに、魔王は更に挑発的な言動を続けた。
下を向いたままの女神の表情はわからないが……確かに、ぷるぷると肩が小刻みに震え始めている。
「……よ、余計なことしないでよこのバカァ! クズのくせにっ、クズのくせにぃっ! わ、私、こんなこと、頼んでないんだからぁっ!」
女神の振り絞った声は、明らかに語尾が震えていた。
その瞳からは涙を一粒、二粒と溢れさせ……感情の赴くままに、魔王へ飛びついたのだ。
その突然の行動に、魔王は驚きつつも体が反応ふることはなく。
「がッ!?」
女神に押し倒される形で、思い切り後頭部を打ち付けた。
そんな魔王が泡を吹いて気を失っているにも関わらず、その上でわんわんと泣き続ける女神。
結局、自力で戻ることも叶わず、二人はメイドが脇に抱えて、弟の待つパラソルの元まで運ばれていったのだった。
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