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「おい姉ちゃん、メシの支度できてんぞ」
普段部屋に引きこもって出て来ない姉に、食事時を告げるのもまた、弟の役目である。
一階のダイニングからでは声が届かないため、わざわざ姉の部屋まで赴くのだ。
しかし、いつものことながら姉からの返事はない。
「ちっ……おい、入るぞ!」
いつもはマスターキーを使って鍵を開けるのだが、今回に限ってはドアノブを捻るだけで簡単に扉は開かれた。
弟はそのことを少々不自然に思いながら部屋を覗き込む。
「いねぇ……アイツ、どこ行きやがった」
部屋がもぬけの殻だとわかると、そっと扉を閉じて部屋を後にした。
「姉ちゃん! いい年こいてかくれんぼかァ!? さっさと出てこねぇとメシ抜きだぞ!」
大声で呼び掛けながら、手当たり次第に部屋を回っていく……が、どこにも姉の姿はない。
三階、二階で思いつくところは全て捜索し、残るは一階……だが、先ほどまで自分は一階で作業をしていたのだ、一階に姉がいればすぐにわかるはず。
「待てよ……まさか、まさかな」
だが弟は、まだ探していない……どころか、探そうともしない場所に目星をつけた。
まあ行っても無駄足になるだろうな……と思いつつも、あの姉のことだからそのまさかの可能性を否定しきれない。
仕方なしに浴室へ向かうと、脱衣所の電気が点けっ放しになっていた。
弟は、脱衣所の入り口で叫び、呼び掛けを試みる。
「おい、まだ風呂入ってんのかよ! お前いつもカラスの行水じゃねーか、なんで今日に限って長風呂なんかしてんだ! さっさと上がれ!」
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