LV1 嗚呼、素晴らしき堕楽園

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相当大きな声を出しているはずだが、やはり反応はない。 「なにやってんだ、早くしろ! ……入るぞ!?」 流石にイライラが募って、我慢しきれずに脱衣所へ突入。そこには、綺麗に畳まれた魔王の着替えと、籠に放り込まれた下着とピンクジャージがあるのみだ。 電気の点いた浴室からは、若干湯気が漏れ出ている……それは、まだ魔王が中にいるという証拠だった。 「姉ちゃん! 聞こえてんだろ、早く上がれ! そんなに長く浸かっても、てめーの心の汚れは落ちねーからな!」 ここまで挑発しても、やはり無反応。 弟の堪忍袋は、とうとう破裂した。 「おいコラてめぇいい加減にしろやァァァァ!」 浴室の扉を怒りに任せて開け放つ……と、弟の目に映ったものは……ぱっと見、誰もいない浴室。 しかしよくよく見てみると、浴槽に何かが浮いている。 例えばそれは、見覚えのある赤くて長い髪……。 魔王は、眠ったまま浴槽に沈んでいた。 「姉ちゃん!!!?!?」 幸いにも、顔が湯に浸かってからそう時間は経っていなかったらしく、無事弟に救助されましたとさ。
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