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「ねえねえ愚民! ちょっと見てもらいたいものがあるんだけどっ」
「はあ……? なんだよ藪から棒に」
書類の整理を終えて、執務室から出てきた直後の弟に声を掛けたのは、紫の前髪ぱっつんロングヘアの巨乳美女、居候の女神であった。
その表情はきらきら星屑をばら撒いているかのようで、上機嫌であることが伺える。
正直、疲れてきたのでお茶にでもしようかというタイミングだった弟にとっては、またなにかロクでもないことに巻き込まれるのではないか、といい気分ではない。
「とりあえず私の部屋に来なさい。女神命令よ」
「やっぱ俺の話なんて聞く気ないよなお前は」
悟りの域にすら達した弟は、面倒になったのでなるようになれ、と無気力なまま女神の後ろをついていく。
テンションの昂りの表れか、やたらと早足な女神に連れられ目的の部屋へ……相変わらず優しくも明るい色合いの部屋であり、女子力の高さを感じさせられる。
「さっき、あまりにも暇だから部屋の整理してたのよ。そしたらこれが出てきて……」
「んん……?」
机の上には、なにやら楽しげなパッケージの、薄い長方形の箱。
おそらく、現物がこの箱に収納されているものと思われる。
「昔ね、リア充はこういうゲームで遊ぶって聞いたから買ってみたんだけど、イマイチやり方がわかんなくて……それで、一度箱から出したきり、また押入れの奥底に眠らせてたんだけど。あんた、これのやり方知ってる?」
「ああ……これなら知ってる。ニヴルヘイムにも輸入されてきてたからな。……まあ、これは俺の知っているものとはちと違うが」
それは弟も見覚えのあるボードゲームであった。
発祥はこの地、ミッドガルドであるが、実は多くの世界に広く知れ渡っているほどメジャーなゲームだ。
ミッドガルド人は世界渡航の術を持たぬ者が大半だが、他の世界はその限りでなく……そう言った渡航者は、気に入った文化や文明を自身の世界に持ち込むことがある。これもその一つ、というわけだ。
そんな背景があり、ニヴルヘイムにも浸透するこのボードゲームの名は「人生ゲーム」……ただし、そのパッケージに書かれたタイトルは。
「壮絶人生ゲーム……!?」
全体的に明るいデザインなのに対し、その「壮絶」の文字だけやたらホラーチックなフォントで、異質さが際立っている。
箱から放たれる異様なクソゲーオーラに、弟は思わずゴクリと唾を飲んだ。
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