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だが、弟の見立ては甘かった。
すぐに思い知らされることになる。
「なんで!? なんで女神の言うことが聞けないのよ! だって私っ……私は女神なのよ!」
そう、女神は正論で納得するような出来た性格の持ち主ではなかったのだ。
散々文句を言っているようであるが、顔は真っ赤で若干目も潤んでいる。どうやら正論が少しは堪えたらしい。
「いや、お前が女神だろうが関係ねーし。俺そもそもニヴルヘイム出身だし、魔王の一族として敵対関係にあるはずだが」
「ううう、うっさい! そんなのしらない!」
なおも継続される冷たい正論攻めに、とうとう女神は耳を塞いだ。
言い返してやりたいところだが、女神にはそれだけの語彙を有していないのである。
「じゃあもうこの話は終わりな。妙なことしねーでおとなしくしてろよ」
最早勝負アリと見た弟は、それだけ言って踵を返す。
部屋の扉に手を掛けたその瞬間。
「ま、待って! 待ちなさいよぉ! 私があいつら呼んでくればいいんでしょ!? だから行かないでぇ!」
背後からがっちり腰をホールドされ、弟は動きを止められた。
文字通り泣きつかれたのだ。
即ち、女神の豊満なバストの感覚が弟の背中に伝わるわけでもある。
「わ、わかったわかった! お前がちゃんと人集めてきたらやり方教えてやっから! だから離れろ! そんで早く行けっ!」
「うんっ、行ってくる! だからここで待っててね? どっか行っちゃダメだからね? 絶対だからね!」
弟は初めての感触に焦りつつも、女神を説得して離れさせることに成功した。
だが、物凄い勢いで女神が飛び出して行った後も、弟の心臓はバクバク高鳴りが収まらない。
「や、やわらかかった……」
女神には悟られていないだろうが、顔もかなり赤く、自覚できるほどに火照っていた。
未だ背中に残る感触を忘れるためには、一先ず心身ともに落ち着けることが先決と判断した弟は、部屋の中央のテーブルまで移動し、腰を下ろすことに。
「……そ、そういや女の部屋ってまともに上がるの初めてだな……なんかいい匂いするし、めっちゃぬいぐるみあるし……」
しかし、それでも依然、落ち着けはしなかった。
スイーツのようなほのかに甘い香りが鼻をくすぐり、色合いや配置された家具、グッズの全てから女の子らしさを感じるこの部屋は、まさに初経験。
無論、自らの姉である魔王のことは女子とカウントしていない。
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