LV15 苦あれど楽なし

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そんなわけで、同梱の取扱書にサッと目を通した弟は、ゲーム初体験であるという女神、メイド、勇者にざっくりとルールを説明する。 「所謂スゴロクと同じで、自分の駒をルーレットの結果の分だけ進めてゴールを目指す遊びなんだが……このゲームは止まったマスに人生にちなんだイベントがあって、所持金が変動するんだ。まあ細かい説明は省いて言うと、ゴールまでに金をできるだけ増やすことが目的だな。最終的な順位はゴールした順ではなく、所持金を多く持っている順になる」 見たところ、ルールは弟のよく知る人生ゲームと同じようだった。 一先ず安堵の息を漏らしたが、嫌な予感はいまだ拭えず。弟は再び気を引き締めた。 「私最初にルーレット回したい! いいわよね!?」 「どーぞお好きに」 全員ルールを頭に入れたら、女神が真っ先に名乗りを上げる。特に異議も出なかったので、女神から時計回りの順でルーレットを回すことに。 「それ! ……7ね。だからここまで移動して……あ! 私職業アイドルだって! 女神に相応しく華々しい職業ね!」 先ず最初のゾーンでは職業が決まる。 月収やイベントにも関わり、幸先を占うこのゾーンでの結果に女神はご満悦だ。 そして次々に職業も決定していき、弟は漫画家、メイドは料理人、勇者はホステス、魔王はフリーターという結果に。 「くっ……何故僕がホステスなどに……!」 「姉ちゃん……ゲーム内ですら……!」 「壮絶……フフフ、楽シイ……」 その反応は様々であった。 勇者は納得いかないのか憤り、弟は姉の結果に同情し哀れみ、魔王は変わらず空虚な目で怪しく微笑んでいた。メイドはずっと真顔だった。 そして二巡目……女神の止まったマスの指示は。 「えーと、なになに……? 職業アイドルの人がこのマスに止まったら……重大スキャンダル発覚で廃業に追い込まれる!? えっ!? あれ、嘘でしょ!? 私いきなり無職!?」 そのあまりに理不尽な文面を、大きく取り乱しながら女神は二度も三度も確認する。 だが、何度見ても結果は変わらず。女神、二巡目にしてアイドル引退。 「そ……壮絶だ……! デビューする前からコレって、どれだけ波乱万丈な人生なんだろうか……!?」 「壮絶人生ゲームってそういうこと!?」 その驚愕は、勇者と弟にも波及する。 そして、これから起こるであろう壮絶人生に思いを馳せ、恐怖に震えるのであった。
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