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のっけから飛ばしてくる壮絶人生ゲームに、室内はほんの少しだけざわめいた。主に弟と勇者である。
その結果に喚き散らすのは女神だが、プライドがあるのかそれとも単に素直なのか、はたまたそういう選択肢が浮かばなかったのかは定かではないが、ルーレットをやり直すことはせずに、次の人へ。
「くっ、回したくねぇ……」
だがおそらくゲームが終わるまで女神は解放してくれないだろう。嫌な予感を押し殺し、弟はルーレットを回す。
「えーと……また何か指示が書いてある……ヤクザの車と交通事故!? 慰謝料200万請求されるだァ!? 初期段階でそんな金ねぇぞ! いきなり借金まみれじゃねぇかぁぁぁぁ!!」
「つぎは、わたし、です。……しょくひん、ぎぞう、が、ばれて、はいぎょう、に、なりました」
「くっ、次々と玉砕していく……! アアアア!? 怪しい女に騙されて500万の壺を買わされただと!? ちくしょうゲームでまで僕の邪魔をするか穢れた存在めェェェェッ!!」
テンポアップし、さくさくと流れるように借金&廃業ブーム到来である。
だがしかし、一人だけこの流れに逆らう者がいた。
「宝クジ……一等、3億……当タッタ」
「「なっ、何ィィィィィ!?」」
そう、最早人生ゲームをプレイする人形と化した、催眠状態の魔王である。
その普段からは考えられない強運で、見事に二巡目から資産3億をゲット。これには弟と勇者も、先ほどとは違った方向から衝撃を受けた。
「クソッ、よりにもよって最初にまともなマスに止まったのがケガタマとはッ……!」
「つーかいきなり3億って桁飛び過ぎだろ! ゲームバランス悪過ぎじゃねーのか!?」
「いや、むしろこれだけマイナスマスばかりあるんだから、最初から金額をインフレさせておくと逆にバランスが取れるのかもしれない……!」
「確かに壮絶だよ! 借金か一攫千金の両極端しかねぇんだからなぁ! あとで開発元にクレーム入れてやる!」
段々とゲームの全容が見えてきた。
その度に弟はその理不尽さに憤りを覚えるが、怒鳴り散らしてストレスを軽減することくらいが、今の彼にできる精一杯の抵抗だった。
だが、それ以上にリードされてしまったことに対する悔しさというものもある。
図らずとも、彼らはいつの間にか、壮絶人生ゲームに夢中になっていたのだった。
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