1090人が本棚に入れています
本棚に追加
その後、ゲームは滞りなく進んで行く。
「あーっ!? 結婚詐欺師に騙されて借金1000万!? もー最悪!」
「はははざまあ見やがれ! ……うわああ!? バイクに撥ねられて左腕複雑骨折!? 治療費払えねー上に三回休みだとォォォォ!?」
「わたし、の、ばん、です。……おうち、もえ、ました」
「メイドちゃんが最早単なるホームレスになってしまったァァァ!? くっ、せめて僕が仇を……アアアア!? 謎の武装集団に拉致られた! 身包み剥がされた上に五回休みってなんだよ!? 泣き面に蜂ってレベルじゃないだろ!」
後半戦に入り、盛り上がりもますます拍車がかかり……現在の状況は、女神が職なし借金3700万。
弟が年収8万、借金5200万。メイドは職なし宿なし借金1600万。勇者はホステスから靴舐め屋に転職し、借金7050万。と、このようになっている。
大方の予想通り、皆借金まみれである……が、やはりこの女だけは違っていた。
「株価上昇……売却、1200万ノ儲ケ」
「IT企業設立……新商品ガ爆発的ひっとヲ記録シ、月収6億以上ノ見込ミ……」
「ぎゃんぶる……全財産賭ケル……勝ッタノデ倍ノオ金、貰ウ……!」
魔王、職業社長、年収72億。ギャンブルでも悉く勝つため総資産は300億を超える。
まさに人生の絶頂。まるで落ち目が見えない好調ぶりであった。
「エヘヘ……楽シイ……」
だが目は笑っていない。座っている。どこを見て笑っているのかわからない恐怖。
最早意図的に魔王に触れたいとは思えなくなった弟だった。
「うううううー! なんでこんなクズばっかり儲けるのよー!? おかしいおかしい! こんなの絶対おかしいわーッ!」
まるで子供のように駄々をこね、魔王の好調を認めない女神。だが、もちろんイカサマはない。
女神が納得しなかろうが、たった一つの事実がそこにあるだけだ。
「もぉぉぉぉ! クズばっかりずるいずるいずるいわよーッ! ちょっと私にもお金よこしなさいよぉぉぉぉっ!」
悔しさのあまり癇癪を起こした女神は、虚ろな目でボードを見据える魔王の肩をガッチリ掴み、ガクガクと激しく揺らした。
「なんなのよこいつゥーッ! さっきから何も答えやしないじゃない!」
しかし依然魔王から返事はない。流石に揺らし疲れたのか、女神は諦めてパッと手を離す。
「んがッ!?」
すると、肩揺らしの勢い余って、支えを失った魔王の頭は、吸い込まれるように机の角に強打したのだ。
最初のコメントを投稿しよう!