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魔王の額からは、ごすん、とそれなりに鈍重な音が響く。
「おい姉ちゃん!? 大丈夫か!?」
「うぅ……あれ、何処だここ……見覚えのねぇ部屋だな」
「目が覚めたのか! とりあえず大丈夫っぽいな」
「まあいいや……んなことよりゲームの続きしよーぜ」
「やっぱりまだ微妙に大丈夫じゃない!?」
弟が声を掛けると、おでこにこぶを作りながらも魔王はすぐに目を覚ました。
初めて来る女神の部屋に疑問を持ちはしても、ゲームの続行を優先するあたり、中途半端に催眠が残っているらしい。
「って私の番だったか……よし、ぶっちぎりで勝ってやんよぉ……! くらえ!」
今までの好調に身を任せ、魔王は渾身の念を込めてルーレットを回した。
そして、止まったマスに書かれていた指示とは。
「さぁて次はいくら増えるやら……はァァァァァ!? 全財産を管理してた特注金庫が怪盗に破られて一文無しだとォォォォォォ!?」
有頂天からの転落。魔王の阿鼻叫喚が、屋敷全域に響き渡る。
「あーっはっはっは! ざまあないわね! クズにはクズらしい生活がお似合いよ!」
「んだとコラァァァァ!」
「そして私はぁぁぁ……やった! 大企業の令嬢と結婚して借金チャラよ! おまけにその子会社の社長就任だって!」
「なッ……何ィィィィィィ!?」
魔王が没落するのを嘲笑うように、なんとたった1ターンで人生逆転に成功した女神。
その後も弟、メイド、勇者が次々と借金を返済し成り上がる……魔王は今までのツケと言わんばかりに借金が膨らみ続け、あっという間に最下位へ。
「ふっ……ざけんなよてめぇらァァァァ! こんなのイカサマに違ぇねぇ!」
その結果に、今度は魔王が不満を漏らす……が、もちろんそれは聞き入れてはもらえない。
「何を言うかこのケガタマが! これが貴様本来の実力だろうがァァァァ!」
「そーよ! 素直に貧乏生活に甘んじときなさい! クズらしくね!」
「アア!? つけあがってんじゃねぇぞこのゴミがよぉぉぉぉ!!」
「おいお前ら落ち着け! たかだかゲームにそこまでムキに……!」
「てめーは黙ってろ童貞野郎!」
「どどど童貞ちゃうわ! お前マジいい加減にしろやマジでぇぇぇぇッ!」
魔王のブチギレを発端としたリアルファイトは、その後夜まで続いたという。
因みに、途中でお腹が空いたメイドは早々に抜け出しておやつのドーナツを食べたのだった。とても幸せだった。
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