LV16 薔薇咲く道は修羅の道

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………… 約1時間後。 結局魔王の押しと脅しに負け、強制的にイベント会場前まで連れてこられた弟は、始まってもいないうちからひどく憔悴していた。 以前の海の時とは、ちょうど立場が逆転した形になる。 「……予想はしてたが、周り女ばっかじゃねぇかよ。すげぇ気まずいんだけど……」 「男がいねぇわけじゃねー。堂々としてろ。そうすりゃあ大して気にならなくならァ」 イベントというだけあって、人でごった返しているが、その人口比は圧倒的に女性が多い。 弟にとってこれだけの女性に囲まれる環境はもちろん初めてのことであり、そしてとても居心地が悪かった。 逆に魔王の方がしっかりしているように見えるほどである。周りが皆自分と同じ趣味を持っているとわかっているからこその余裕だろうか。 「ったく、だらしねぇな弟ォ。本当お前は童貞拗らせてるよな」 「てめぇに言われたかねぇわ!」 「安心しろや、ここに来るような連中はだーれもてめぇにゃ興味ねーから。みんなホモ大好き、素晴らしき同志たちよ」 「ここの連中みんながお前と同じレベルであってたまるか……!」 まさに水を得た魚のように生き生きとする魔王。 弟はフラつきながらも、なんとか正気を保って踏ん張り、魔王の隣を歩いていく。 だが、それも結構ギリギリであり、とにかく早く帰りたいその一心であった。 「つか、結局これどういうイベントなんだ……? 姉ちゃんは何目当てで来たんだよ、これ」 「あー? BL同人誌のイベントっつったろ。要するにだ、薄い本書いてるやつらが出展して、それを手売りするっつーイベントよ。大半の参加者はそれを買う側だけどな。もちろん私もだ」 なんのイベントかいまいち理解できない弟は質問してみたが、回答を聞いても理解しがたかった。 イベントの概要はわかっても、なんのためにそんなことをするのか意味不明だったのだ。 だが魔王はとても楽しそうにしているし、周りの女連中からも黄色い声が聞こえてきたりする。楽しい人にとっては楽しいのだろう、ただ弟にはそれが余計に息苦しく感じる。ますます早く帰りたい。 「まーとりあえず私らもどっか並んでみっか。行くぞ弟!」 「ええ……並ぶの……?」 ぐいぐいと魔王に引っ張られる弟は、大きく溜め息を吐いた。 なんで俺がそんなもののために並ばないといけないんだ、と。
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