LV18 一寸先の幸先の闇

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こうなってしまえば、あとはもう諦めるしかない。 このわがまま女神は何かしらの要求をしてくるはずだ。そしてそれを飲むまで、延々と機嫌は直らず、喚き散らしてくることだろう。 さらなる面倒を回避するためには、どこかで妥協することが必要だ。できるだけ最小の面倒で済ますために。 「……私も、どっか連れて行きなさいよ」 きた。弟の読み通りである。 横目で睨んでくる女神の仕草はとてもいじらしく可愛らしいものだったが、今の弟にはそれを気にする余裕はない。 この程度の要求で済むのなら、喜んで受けてやろう、としか考えていなかった。 「別に構わねーが。で、どこへ行くんだ?」 「えっ? どこって……おしゃれな喫茶店とかー、ブティックとかー……あ! そうそう、映画館とかも行ってみたかったのよねー!」 安堵の表情を浮かべながら尋ねると、女神は一転、ぱあっと明るく楽しそうに語り始める。 しかし、これは思いの外長くなりそうだ。安易に要求を飲んだのは失敗だったか……? などと思案しているうちに、再び女神の口が動く。 「んー、いろいろありすぎて悩んじゃう! 今日一日考えさせてくれる? どうせあんたじゃロクなトコ知らないだろうから、私がいいところ調べといてあげるわ! 感謝しなさい!」 「はぁ……? 今から行くんじゃなくて?」 「そうよ、行くのは明日! とりあえず……そうね……サイカシティミルキーロードのスクランブル交差点に10時集合でどう?」 「なんでわざわざそんなことするんだよ。同じ家に住んでるんだから、家から一緒に行けばいいだろ」 「気分的な問題よ! それに、待ち合わせってやつ一度してみたかったのよねー! リア充っぽい!」 怒涛の勢いで、強引に話を押し進める女神に、弟は疑問を禁じ得なかった。 わざわざ日を跨ぐのも、一旦外に出てから合流するのも、弟には意味があるとは思えないのだ。 非合理そのものだが、提案者の女神がそう言うならそうする他にない。 「ああ、わかった」 「ふふん、約束よ! 少しでも遅れたら承知しないんだからね! あ、あとできるだけおしゃれな格好してきなさい! ダッサい服を着て女神の隣を歩くことは許されないわよ!」 なにはともあれ、女神は非常に嬉しそうだった。口元も緩みに緩んでおり、それを隠そうともしない。 その非常に高いテンションのまま、スキップしながら女神は部屋に戻っていったのだった。
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