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「ふん、もういいわよ! よく考えてみればあんたって私の敵だものね! なんだったら、今ここでブッ飛ばしてあげてもいいわよ?」
「あん? なに当たり前のこと今更思い出してんだ。てかお前が俺をブッ飛ばす? 笑わせんなよ駄女神ィ」
まさに一触即発の雰囲気である。
二人はバチバチと火花を飛ばし合う。周囲は若干迷惑そうにしているが、痴話喧嘩としか思われていなかった。
「あーもうムカつく! ムカつくムカつくムカつくぅぅぅッ! あんたなんて……死んじゃえーっ!」
挑発的に自分のことを鼻で笑った弟に腹を立て、女神はとうとう我慢の限界を越えてしまった。
先に手を出し……というか足を出し、思いっきり弟の股間を蹴り上げたのだ。
完全に油断していた弟は、突然の女神キックに反応することすら出来ず。
「~~~~ぁぁぁッ!!?!?!??!!?」
声にならない声、最早超音波的な断末魔を上げて、ぐるんと白目を剥いてアスファルトに倒れ伏した。
その倒れた弟を見下ろしながら、女神はふつふつと湧き上がる勝利の感覚に酔いしれる。
「ふ、ふふふ……やった……やったわー! 私、勝ったのね! あははは、ざまぁないわね!」
喜びを抑えることもなく、女神の心情は高笑いとなり青空に響いていた。
「あはは……あー、すっきりした。じゃあねー、愚民。私は優雅に休日を謳歌するから」
弟のことをひとしきり足蹴にし終えて満足した女神は、踵を返して歩いていく。
鼻歌混じりの足取りは軽やかだ。
「あ、アイスの屋台……そういえばちょっと喉乾いたし、ちょうどいいわね!」
しばらく歩いたところで、アイス屋さんを発見。
上機嫌なのも相まって、何か頼んでみることに。
「ストロベリーアイスをひとつちょうだい! この私のために丹精込めて作るのよ!」
と、上から目線で注文。しかしそんな女神に対しても営業スマイルを欠かさないお姉さんは、流石にプロ意識が高い。
「なかなか美味しそうじゃない」
「ありがとうございます。お会計は200ガルドになります」
「ああ、お金ね。お金なら……ああああッ!?」
そして会計時に致命的なミスに女神が気付いた。
そう、女神はお金を携帯していなかった。今回の外出も、全て弟の財布頼りだったのである。
この後、目を覚ました弟は泣きながらアイス屋に土下座する女神を発見。弟が支払いを済ますことにより、事無きを得たのであった……。
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