LV19 冷凍した熱々な合宿

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『よーし、いい感じに体もあったまったところで! 早速エクササイズ始めていくぜ!』 フリー隊長が画面の中でそう宣言し、門下生の細マッチョ美女たちがストレッチを止める。 充分に体がほぐれているとは言えないが、再生されたDVDはこちらの都合など考えてはくれない。 「おいっ……つーか、ちょっと待てよ……どーゆーことだ、こいつァ……!」 しれっとエクササイズ続行するテレビの中のフリー隊長とその門下生たちを見て、魔王は驚愕の表情を浮かべた。 わなわなと震え、絶対に納得できないという意思がこぼれ出ているかのようにも見える。 「このDVDッ……フリー隊長以外女しか出てねーじゃねーか! なんだよこれェ! ホモは!? ホモはどうしちまったんだよフリー隊長ォォォォォ!」 魔王の不満はエクササイズそのものではなく、映像の出演者についてであった。 目の前で白い歯を光らせるガチムチマッチョな教官が、手取り足取り美女に指導をする姿を見るのは彼女にとって我慢ならないようである。 「てかあのマッチョ、いくら教官だからってベタベタ触りすぎじゃない? ちょっと私なら筋肉に触られんのとか無理なんだけど……なんであの女どもは笑顔でいられるわけ? 痴女なの?」 誘発されるように女神までもが、今度は演出に文句をつけ始めた。 両腕で自らを抱くようにし、身震いを抑えられないほどには、生理的にボディタッチを受け付けられないらしい。 「な、何故あの男は自ら穢れに触れに行くんだ……!? 理解不能、理解不能ッ……う、吐き気が……!」 そのボディタッチに不快感を表したのはこの勇者も同様だ。その方向性は180度違っていたが。 口元を押さえ、画面を直視できないほど気分を害されたようだ。これに関しては、勇者の潔癖からくる感受性が高過ぎる所為だろう。 「フ、フリー隊長、あんな際どいトコに手を伸ばして……! あーッ!? ダメだろそんなの! お前らただの先生と生徒だろォ!? そんな禁断のアレ的なソレが……!」 童貞を拗らせた弟には、若干刺激が強かったらしい。視聴年齢制限が掛けられるような行為は全く及んでいないはずだが。 異性と手を繋ぐことすらしたことがない彼からすれば充分すぎる。もちろん、アダルトなビデオも真面目な性格故に見たことがなく、免疫ゼロ。 結果として、運動どころではなかった。黙々とフリー隊長の指示通りにエクササイズをするメイドを除いて。
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