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ここでようやく、運動を始めるに当たってのメンタル面の問題を一つ解決した4人。
既にエクササイズのメニューは随分先に進んでしまっていたが、今からでもと運動を再開する。
「さぁーてめぇら! 本番はこれからだ! 張り切っていくぞォォォォォ!」
「「「おおーっ!」」」
士気を更に高めるため、弟が先頭に立って音頭を取ると、魔王と女神と勇者もそれに続き、拳を天に突き上げる。
ここまでで精神的に一皮向けた彼らの表情は、10分前とはまるで別人のように煌めいていた。
「見ててくれメイドちゃん! これが僕のォォォォ……新しい姿だァァァァ!」
ある者は、自らの恋心のために。
「この試練を乗り越えてッ……私はモテる! そしてぇぇぇぇッ、念願のリア充になるのよォォォォ!」
またある者は、自分を磨くために。
「ああっ! またフリー隊長のおさわりが出たァ! おいおい、そんなに触れ合って……絡み合って……そんな、そんなのっ……妄想が捗らねぇワケねーだろォォォォォッ!?」
そしてある者は、内なる欲望を満たすために。
目指す場所は皆バラバラだった。だが、同じ画面を見、同じ運動をしていることについて一体感すら覚えつつもあった。
躍動する肉体、ほとばしり輝く汗。そのどれもが美しい。
一つの目的に向かって邁進する姿は、何物にも代え難い尊きものなのだ。
だが。
「はぁ、はぁ……げほっ、ゲエッホゴホッ!?」
「……死んじゃう、もういやぁ……」
「あ、足が……上がら、ん……」
「…………」
彼らの威勢は、5分と保たなかったのだ。
だらしなく両手足を投げ出し、フローリングに寝転がった彼らは、激しく咳き込み、弱音を吐きまくり、指先すら動かせず、目からは生気が失われていた。
そう、メンタル的な問題をクリアしても、フィジカル面での問題はどうしようもない。こればかりは、一朝一夕には解決しないし、誤魔化しも効かない。
この結果は想像出来なかったわけではないのだが、エクササイズの激しさは運動不足4名の甘い見積もりを軽く凌駕してきたのだ。
リビングに残ったのは、倒れ伏した4人と、DVD再生しっぱなしのテレビから垂れ流されるハイテンポなBGM、そして淡々と運動をこなしていくメイドの整った呼吸音のみである。
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