LV20 姉弟前線、妹襲来注意報

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「ったく……そもそも僕は捕虜って『てい』だろ? 丁重に扱うとか言ってたくせに、インターホン鳴ったら玄関出ろとか何様のつもりだあの前髪ぃ……」 ぶつくさと愚痴を垂れ流しつつも、その足はしっかりと玄関へ向かっていた。 納得はしていないものの、客の出迎え程度ならやぶさかではない、といった心理状態である。 歩きながら懐に忍ばせた使い捨てマスクと帽子を被り、外界の空気に触れる用意は万端。本来ならサングラスもするところだが、生憎部屋に置き忘れてしまったようだ。取りに行くことも考えたが、あまり待たせすぎるのも後が怖い。 「はい、どちらさまで……?」 結局、サングラスはしないまま扉を開けることを選んだ。 顔が出る程度の角度に開いたドアから、おそるおそるで外の様子を伺い見る。 「あれ、誰もいない……? タチの悪いいたずらか。だとしたらピンポンダッシュされる魔王城ってそれはどうなんだ……一応ラストダンジョンなのに舐められすぎだろう」 しかし見たところ人の姿は見当たらない。 余計な手間を掛けさせられたことには少し腹が立つが、それ以上に安心感が勝る。 下手に穢れの相手をしなくて済んだからだ。 そして自分で言っておいてなんだが、この城は舐められても仕方ないと思った。 「いたずらではありませんわー! わたくし、ちゃんとこのお城に用があって参りましたのよー!」 「うぉぉぁぁぁ!?」 油断しきったところで、突然大きな声が勇者の鼓膜に飛び込んできた。驚き過ぎて情けない声を上げ、大きく仰け反って背中からすっ転んだ。 「アーッ! 痛い! 背中が痛い! 思いっきり打ったァァァァ!」 完全に不意を突かれたのもあって、受け身も取れず。そのまま痛みに悶絶することに。 「まあ、大変! 大丈夫ですの!?」 それを気の毒に思ったのか、その声の主……まだ年端もいかぬ少女が、カッコ悪くじたばたする勇者の近くまで行き、しゃがみこんだ。 取り敢えず勇者を横に寝かせて、その背中をさすってあげることに。 「ああ……一先ず痛みは和らいだ気がする」 「それは吉報ですわー!」 その甲斐あってか(もともと大したダメージでもなかった)勇者もすぐに復活。復活を少女の笑顔が祝福してくれる。 改めて礼を言おうと立ち上がると、その少女の小柄さが浮き彫りになる。勇者が長身なこともあって余計そう感じるのかもしれない。 目測では、120cmほどだろうか。
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