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軽いノリのまま、大魔王は更に言葉を続けた。
「心配せんでも仕送りはするし、魔王軍の者も実働部隊として派遣するから気楽にやってくれ。あとお前、姉である魔王のサポートよろしく頼むぞ」
「……わかりました」
俺が魔王じゃないのかよ。
不満はあるが、今はグッと堪える時である。
「ミッドガルドへの転移門は下の階に開いておいたから、早速行ってきてくれ。お土産楽しみにしとるぞ」
大魔王との話も終え、立ち上がる男。
そして踵を返し、出口へ向けて一歩……踏み出したところで、隣の姉が動いていないことに気が付いた。
「……おい、行くぞ姉ちゃん」
声を掛けるも、返事はない。
不審に思った男は、姉の前に回り込んでみた。
「くかー……すやぁ……」
……すると、姉はなんと立派な鼻ちょうちんを作り、首をかくんかくんと揺らしていた。
「寝てんじゃねぇよッ!」
「ぐぺやぁッ!?」
男の頭突きが綺麗に炸裂し、姉の頭蓋から鈍い打撃音が発生した。
姉は奇妙な悲鳴をあげると、泡を吹いて倒れる。
「……失礼しましたー」
そして弟は、襟首を掴んで、姉を引きずって玉座を後にする。
……結局、父、大魔王との謁見で女の意識が覚醒することはなく、弟の手によって気絶したままミッドガルドへ強制連行されることとなったのだった。
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