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ミッドガルド、アルトゥーラ山脈。
標高7000~8000m級の山々が連なる、ミッドガルドでも類を見ぬ厳しい環境の山脈であるが、実はこれを越えた先に、魔王の住処、魔王城は存在する。
厳しかったそれまでの道中とは裏腹に、だだっ広い平野となっており、草木も茂り緑豊か。
気候も暑くもなく寒くない、過ごしやすい環境。
空気は澄み渡り、心地良い風が吹く。まるで天国のようなその場所に、白い城は建っていた。
城とは言うが、大きさはそれほどでもない。三階建ての、ちょっと広い豪邸程度のもので、見た目もこの風景にマッチするどことなくメルヘンなものである。
何故魔王の城がメルヘンチックな外観をしているのかと言えば、現魔王がこの物件を気に入ったからという理由に他ならない。
その当の魔王はと言うと、私室にてプライベートな時間を過ごしていた。
「うひひ……あー萌えるわぁ……なんだコイツ可愛すぎか。ツンデレとか最高かよオイ」
にやにやと涎を垂れ流しながら、パソコンの画面を食い入るように見つめるこの女性こそが、城の主人。
ぼさぼさと伸びっぱなしの赤い髪に、長時間画面を見つめ続けたために充血している青い瞳、だらしないダボダボのピンクのジャージという出で立ちではあるが、間違いなく彼女が魔王なのである。
「うおおお! CG回収キタコレ! なんだよこいつらエロエロかよ! いいぞもっとやれ」
画面の中には、裸で抱き合う二次元の男達。
部屋に漏れる、二人の男性の荒い息遣い。
魔王の興奮は最上級に達しつつあった。
「あははぁ……うぇっへへへ」
気色の悪い笑顔と気色の悪い笑い声。
気品溢れる魔王の姿は、ここにはなかった。
「なにやってんだこんな昼間っからァァァァ!」
「うぎゃあああ!? 私のパソコンだぞもっと優しく閉じろ童貞野郎!」
しかしそんな気色の悪さを全て吹き飛ばすかのような男性の怒鳴り声と、それと同時に勢いよく閉じられる折り畳み式PC。
魔王はその元凶たる若い男性に、血相変えて掴みかかった。
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