LV1 嗚呼、素晴らしき堕楽園

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完全に勇者に興味を失った魔王は、再びノートパソコンを立ち上げ……ようとして、それを弟に阻止された。 パソコンに伸ばした左手の手首を、がっちり弟に握られてしまったのだ。 再び姉は不機嫌そうに、ジロリと弟を睨み付ける。 「なに、邪魔しないでくれる?」 「いや仕事しろよ」 「私は積みゲーの消化しかしねーぞ」 「働けっつってんだよクソニートが! 配下の者共に示しがつかんだろ!」 思いっきり弟が怒鳴りつけるも、全く反省の色が見えない。 それどころか、心底不愉快そうな表情を浮かべている始末である。 「弟が配下連中に指示とか出してんだろ。じゃあ私やることないじゃん」 「本来ならお前がするんだよそういうのは! ……てか臭っ、体クッサ! 最後に風呂入ったのいつだてめぇ!?」 「ちゃんと入ったっての。三日前に」 「それはちゃんと入ったとは言わねーよ!」 弟の怒鳴り声、もとい説教に姉は一切動じない。 苛立ちを募らせ、歯軋りまで聞こえてくる。 「ちっ……弟の癖にこの魔王に小言とは生意気な。本当いつか殺してやるからな……」 「クソ雑魚のくせに何言ってんだ」 「この短小野郎が……!」 一層鋭い目付きで弟を睨み、彼の顔に痰を吐きつけた。 ……次の瞬間、弟の頭突きが炸裂し、姉の意識が吹き飛んだのは言うまでもない。
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