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弟も勇者も、本来なら極力我関せずのスタンスを貫き通したいところではあるが、どうにもおとぼけ女神共の会話を無視できないでいた。
悲しき性である。
「ところでセンチュリア様! 二人目の勇者を選んだり今の勇者を解任するにはどれくらいの女神度が必要なんですか?」
『一度した勇者契約は、人間か女神のどちらかが死ぬまで破棄することはできませんが、新しく二人目を選ぶのでしたら、女神度5もあれば可能ですよ』
女神センチュリアの提示した数字が大きいのか小さいのかはイマイチわからないが、0.3の女神代行には到底不可能だということがわかる。
これで潔く諦めて帰ってくれないか、と弟も勇者もほんのり願った。
「……つまり、あのヘタレを殺せばまた新しく勇者を選び直せるわけね」
「発想が女神のそれじゃないぞ!? なんで今の話を聞いて自分の女神度を上げるっていう考え方ができないんだ! そんなんだから0.3なんだよ!」
手元のフォークを右手でぎゅっと握りしめながら、ジロリと勇者を睨んだ女神代行。
勇者はそのマジな視線に焦りながらも、至極真っ当な意見を吐いた。
『ヒカちゃん』
フォークの先端と勇者の顔を交互に見つめる女神代行の姿が見えているのかは定かではないが、女神センチュリアは横槍を入れるように、その名を呼んだ。
「はい、なんでしょう?」
『もちろんわかっているとは思いますが……ヒカちゃんの代わりはいくらでもいるんですからね?』
そう言ったセンチュリアの口調も、言葉遣いも、何一つ先ほどまでと違いはなかったが……先ほどにはない、プレッシャーのようなものが、確かにそこにはあった。
その言霊は、クソザコメンタルこと女神代行を震え上がらせるには充分すぎる。
「は、はい……ごめんなさい」
『わかればいいんですよ』
女神代行の声と体は、小刻みに震えていた。
対照的に、センチュリアは上機嫌そのもの。
『それではヒカちゃん、がんばってくださいねー? 私は忙しいのでこれで失礼……あ! 今ダルちゃんウノって言ってないー! はい、二枚ドローしてくだ』
本物の女神、センチュリアとの通信は、ここまでで一方的に途切れてしまった。
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