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「……お前の上司、今UNOやってなかったか」
「や、やってないわよ! ……確かにそういう風に聞こえたかもしれないけど、全部気のせいだから……うん、気のせいよ」
通信が終わり数秒後、口を開いた弟は呆れた様子で女神に視線を向ける。
その女神はというと、露骨に彼と目を合わせようとはしなかった。本気で気のせいにしようとしているらしい。
「というか、結局倒し方とか何も聞いてないじゃないか。諦めて帰ったらどうだ」
「だから帰らないってば! それに、センチュリア様だってがんばれって言ってくれたし」
次に言葉を掛けたのは勇者だ。全ての女性が穢れにしか見えない彼からすれば、女神にはさっさと帰ってもらいたいところ。再三、帰宅を奨めた。
だが、女神の意思は意外にも固かった。センチュリアの激励がモチベーションになってしまったということもあってか、より居つく気満々である。
「ま、ここに住むのは決定として……とりあえずはあのクズをどう殺すか、じっくり作戦を練ることにするわ。朝ごはんでも食べながらね」
センチュリアと通信していたせいもあってか、まだほとんど手をつけていない朝食に向き合う女神。
改めてナイフとフォークを持ち直し、目の前に並べられた料理に突き立てる。
「……と見せかけて死ねぇーッ!」
かと思われたが、突如豹変して机に足を乗り出す。
狙うは、向かいに座るクズこと魔王。
そのフォークの先端を、魔王の額に突き刺さんと襲い掛かる……が、もう一歩踏み込むために乗り出した左足をテーブルのフチにぶつけてバランスを崩し転倒。
そのまま、眠気でうつらうつらしていた魔王と頭と頭で正面衝突し、テーブルの上の料理の殆どを盛大にひっくり返した。
ぶつかった勢いのまま、女神は魔王を巻き込んで椅子ごと倒れ込み……魔王は床へ後頭部を強打。女神は魔王に覆い被さるようにして、ひっくり返した料理やジュースをその身に浴びた。
二人はピクリとも動こうとしなかったが、その様子を間近で見て、そしてその被害を被った弟の怒りは限界を突破。
このあと、彼女らは一日中物置部屋に閉じ込められることになるのだが、気を失った魔王と女神には知る由もないことである。
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