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「さっぱりした~。ちょっと長めに浸かってたけど、その分疲れも取れた気がするわ~」
とある日の夜。この日はたまたま、女神が一番最後にお風呂に入ったのだが、その代わりにいつもよりゆっくり入浴を楽しむことができた。
故に、少し夜の自由時間は減ってしまったが、それでも疲労を取り除けたので、女神は非常に上機嫌だった。
「ん……?」
部屋に戻るため三階に上がったその時、遠くの方に二人の人影を見た。
それは弟とメイド。なにやら二人揃って弟の部屋へ入ったようだが、なにをしていたのか、あるいはしようとしているかまではわからない。
「ああ、大方いつものお勉強かしらね。昼も仕事してるはずなのに、よくがんばるわねぇ、二人とも」
ただ、だいたいの予想はできる。
それは日課にもなっているメイドのお勉強。まともな教育を受けてこなかったメイドのために、読み書きや計算など、これから生きていく上で必要な知識を弟が教えてあげているのだ。
そしてその個別授業は、いつも風呂から上がったあと、弟の部屋でと決まっている。実際にその風景を見たことはないのだが、二人の会話から話だけは知っていた。
「お勉強って、いったいなにを教えているのかしら? あの子なら、わざわざそんなの教えなくても生きていける気がするけど」
確かに女神の言う通り、メイドなら勉強などしなくても生きてはいけるだろう。
だがそれが人間的な生き方とは限らない。みすぼらしく、そして野生的なライフスタイル。メイドはそれを苦と感じたことはないが、弟としてはせめて人間的な生活をメイドには送って欲しかった。
「……ちょっとくらい、覗いたってバレないわよね」
そんな弟の思惑など女神は知ったことではないが、純粋になにをしているのか気になる。目に見えないものに興味を持つのは、女神的には当然の思考だった。
そうと決まれば行動は早い。音を立てないよう、さささっと弟の部屋前に移動し、まずは聞き耳を立ててみる。
すると、ちょうどその時
「ひゃぁ……んっ……」
短い悲鳴のような、甲高いメイドの声。しかも、今までこんなメイドの声は聞いたことがない。
続いて、メイドに優しく語りかける弟の声が。
「相変わらずメイドはここが弱いな。気持ちいいか?」
「はい、クロード……さまぁ、んっ」
「もし痛かったら言えよ。もっとゆっくり動かしてやるからな」
「はい、わかり、まし……た」
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