LV88 いやしいやしのハッピールーム

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「どうした? ほら、早くこっち向けよ」 「わ、わかってるわよっ!」 弟に急かされた女神は、その場でごろんと回転するようにして向き直る。 目の前には、弟の姿。直接目に移るとなると、先程とは緊張感が段違いで、女神は自身の頬が熱くなるのを感じていた。 「よし、じゃ続きやるぞ」 そんな女神の心境など露知らず、弟はなんのためらいもなく耳掃除を再開する。 耳の穴の奥までをよく見るためか、弟がぐっと顔を近づけたのがよくわかった。視線を少し上に向けると、真剣な弟の表情を見ることができる。 直接その表情を伺ったせいもあり、より自身が耳かきをされている実感が強くなった女神は、一層顔の火照りが強くなった。 「……まあ、こんなもんかな。どうだった?」 「う、うん……まあまあ、気持ちよかったわよ……」 緊張で時間が過ぎるのは一瞬のことだった。気持ちよかったという感想に偽りはないが、実際はほとんど覚えていない。 女神は、そう言いながらも、やはり弟と目を合わせることはできなかった。というより、しばらく合わせられそうもない。 だが、その時ふと女神の中にほんの少しの怒りが芽生えた。 何故自分はこんな思いをしているのだろうか? 何故自分だけが? しかも相手はよりによって特に意識したこともない弟で、その上なんで相手だけそんなに余裕そうに笑っていられるのか? 考えるほどにそれはイラつきへと変わり、同時に悔しくもある。このままでは、女神としてのプライドが自分自身を許せない。 「よし、そんじゃあメイドを部屋に帰して……」 「寝て」 「え?」 「いいからここに寝て。女神が膝枕してあげるって言ってるの。ありがたく思いなさい」 一仕事終えたような雰囲気を醸し出す弟を、女神は一言で制止した。 なにやら語気が強くなっている女神に圧されて、思わず弟は言われるがままに頭を預けてしまう。 「つ、つい言う通りにしちまったが……女神? こいつは一体……?」 「さっきのお礼よ。今度は私が耳掃除してあげる」 困惑している弟の右手から耳かき棒を奪い取り、すっかり準備万端だ。 ただならぬ女神の様子に、弟は少なからず恐怖を感じていた。 「お、おい……お前、人に耳掃除なんてやったことあるのか?」 「ないわよ。でも大丈夫、ちゃんと優しくしてあげるから」 そうは言うものの、どこか女神の口調は素っ気ない。不安な思いは煽られる一方である。
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