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「なーにしてやがんだ、おい」
ゲームのオンライン対戦で負けが込み、気分転換にと屋敷をうろついていた魔王は、リビングで珍妙な光景を目の当たりにしていた。
「ああ、姉ちゃんか。いやなに、倉庫にある不用品をまとめて実家に送り返してやろうと思ってな。あのハゲ、余計なもんばっかり持たせやがって……」
見渡す限りの物、物、物。おびただしい数のあれやこれが、リビングに散乱していたのだ。
これらは、魔王たち姉弟がミッドガルドに転居する際、倉庫ごと転送されてきたアイテムや雑貨である。
備えあれば憂いなし、と父大魔王が片っ端から倉庫に入るだけ詰めて送ってきたのだが、実際に使用したものは中身の一割にも満たない。
「んだこりゃ。ガラクタだらけじゃねぇか」
「それはニダヴェリールのドワーフが打ったなんとかって魔剣だな。軽いくせにめちゃくちゃ頑丈で、よく斬れるらしい」
「なんでそんなもんが倉庫で埃被ってんだ!?」
あまりにも雑に置かれていたのでおもちゃかと思っていたが、実はモノホンの魔剣らしい。
しかも、似たような武器がちらほら散見される。些か魔剣の管理がずさんすぎるのではなかろうか。
「まあガラクタには違ぇねぇよ。いくら強い武器っつったって、扱うのは雑魚だからな」
いい剣を持てばいきなり強くなるかと言われれば、当然そうではない。武器を装備しただけでステータスが上がるゲームとは違うのだ。
「使い道があるとするなら、せいぜい野菜を切るくらいか……」
「しょっぺぇ使い方だなァ……」
宝の持ち腐れとはまさにこのこと。使用法が庶民的すぎる。
余談だが、これらの全ては魔剣としてのランクは最下位に位置する粗雑品である。それでも普通の刀剣類に比べれば、充分すぎるほど強力な武器なのだが。
「この辺は……私らがガキの頃のオモチャか? なんでこんなとこに……」
「さあ……あのハゲが処分せず取っておいて、それがそのままここにきたってだけだろ」
「この銃なんか、やけに新品くせーっつーか、むしろ最近どっかで見たような……」
「……おい、姉ちゃん。そいつは……」
魔王らが昔遊んでいたおもちゃに紛れて、当時使った覚えのない、やたらSFチックなデザインの銃。
それを手に取った魔王を見て、咄嗟に弟が制止するも、一足遅く。
魔王はうっかりトリガーを引いてしまい、銃口から発射されたサイケな色合いのレーザーに撃たれた。
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