LV99 姉と弟

2/10
前へ
/1013ページ
次へ
「……提案? 何を提案するって言うん?」 いきなりの申し出に、大魔王は困ったように首を傾げた。 この最終戦に向けて盛り上がっていくというところに、水を差すような行為。しかも、当事者側からの発言だ。訝しむ目で見られるのも仕方がない。 「ええ。最終戦の内容についてです」 「オイオイオイ、待てやコラ」 さらに続く言葉に待ったをかけるのは、同じく最終戦に残った魔王だ。 「対戦者側からそれ言っちゃあダメだろぉ? お前に有利なルールにされるかもしれねぇからなァ」 魔王のつけたクレームはごもっともだ。 著しく公平性に欠ける。文言次第ではどんな解釈も出来るからだ。 「安心しろ。むしろ、お前からそういう文句を無くすためのもんだ。納得できなきゃこの話はそれで終いだ」 「……言ってみろ」 だが弟の狙いはその真逆。後から魔王が結果にいちゃもんをつけたり、ゴネたりするのを防ぐ目的のために言っている。 そしてそれは、自分の退路を断つということでもある。 「俺が指定するルールはたった二つ。一つは、俺とお前のタイマンで勝負をすること。さっきまで味方だった二人はもちろん、自分以外の他者の力を借りたり巻き込んだりした場合は即失格だ」 これまでのチーム戦とは違い、完全な個人戦。 本人の力量のみに勝敗が左右されるため、ここまででは魔王に不利なルールと言わざるを得ない。 「そしてもう一つは、負けを認めた方の負け。俺からの提案は、たったこれだけだ」 何をもって勝利とするかではなく、何をもって敗北とするか。 自らが負けと認めることでしか敗北にはならない。まるで具体性はないが、これならば文句をつけられるはずもない。 「いいぜ、面白ぇ。その勝負乗ってやんよ」 具体性はない。しかしそれ故に、ルール無用、なんでもありということ。 そういうのであれば望むところだ。肉体より精神の勝負になれば、自分が負けることは絶対にない。魔王はそう確信していた。 「それで構わねぇかぁ? 大魔王様よォ」 「まあ、お互いそれでいいっていうなら、私も止めないけど……決着に納得できるかは、確かに大事なことだしねー、うん」 後継戦の主催者である大魔王もそれを容認。 せっかく準備したのに……と、少し残念そうにしてはいるものの、それはそれとして割り切り、快諾してくれた。 もともと、後継者が誰かで揉めるのを防ぐための後継戦。大魔王もこの形がベストであると判断したのだ。
/1013ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1090人が本棚に入れています
本棚に追加