LV--  侵略のススメ

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「もう、マモルったらしつこいなぁ! どこまで追いかけてくるのー!?」 「お嬢こそ、すばしっこさに磨きがかかってるッスよ!? 疲れ知らずッスか!?」 実際、まだ幼いシロナよりも、近衛隊長を務めるマモルの方が体力も身体能力も勝る。今までシロナが逃げ出した時も、なんだかんだで彼女を捕まえていた。 でも今回は一味違った。直線の廊下だけでなく、各部屋の障害物を駆使したり、人と人の間をすり抜けたりと、体格の大きい大人が通りにくい場所を選んで逃走している。幾度と無く繰り広げられてきた逃走劇の中で、シロナは成長し続けていたのである。 そして、シロナが曲がり角を曲がった瞬間。 「おや」 「あっ……!? ミコぉっ!?」 ばったり鉢合わせたのは、内側にはねた鈍色のショートヘアと、光の射さない深海のような色をした瞳を持つ、顔に横一線のツギハギが特徴的な彼女の名は、ミコ=シスイ=マモンテス。 彼女もまた大魔王とは旧知の仲であり、また現在は大魔王城の中でも強い発言力を持った重役。シロナとも顔見知りだ。 そんな彼女は、シロナをひょいと捕まえて、楽々と肩の上に担いでしまった。 「あーっ!? ミコー、おーろーしーてー!」 「ミコミコーっ! 正直助かったッス!」 「このお転婆姫、また逃げようとしてたんですか。宰相の娘が聞いて呆れますね。まあ今回は呼びに行く手間が省けたのでよしとしますが」 足をバタバタさせて必死に抵抗するも、ミコは全く動じることなく再び歩き始めた。 ミコが捕まえてくれたおかげで、マモルはほっと胸をなで下ろす。そして、一つの疑問を口に出した。 「ミコミコ、お嬢になんか用事あるんスか?」 「大魔王様がお呼びしておりましたよ。結構大事な話があるとかなんとか……まあ、行ってみればわかるでしょう」 シロナに用があるのは、この城の主らしい。たまたまミコが別件で大魔王を訪ねた際、ついでに声を掛けるように言われていたのだ。 正直、彼女ほどの身分の者がこのような使いっ走りのようなことをさせられるのは不満があるのだが、そこは昔ながらの知り合いという点も考慮して信用されていると思うことにした。 「えっ、おばさまが……!? いーやーだー! わたしなにもわるいことしてないー! はーなーしーてー!」 「離したら逃げるじゃないですか。手間かけさせないでくださいよ。とても面倒なので」 ミコは表情一つ変えずに、淡々と頼まれごとをこなすだけ。子供のわがままと割り切って耳も貸さず、そのまま連行することにしたのだった。
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