プレリュード

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「す、すまない。君の目が気になってしまって。カラコンをされてるんだね、グリーンに見えたものだから。」 すると、意外な言葉が帰ってきた。 「僕、実はクウォーターなんです。 目には、黒いカラコンを入れているんですが、わかっちゃいましたか。なかなか鋭いですね。」 と少しだけ悪戯な目つきで、こちらを見て、何だか嬉しそうにしている。 「僕、あんまり英語できなくて、でも、目の色のせいで色々と英語の事、聞かれたりするんで、もう日本人に見えるように生きることにしたんです。 別にこの目が嫌いってわけでは無いんですよっ」 なるほど、それなりに、苦労してんだな。 まぁ、やっぱ目立つもんな。 変に納得してしまった。 「そうなんだね、まぁ、ちょっと気になっただけだから。」 あれだけじっと見ておいてこういうのも可笑しいけれど、他に言葉が見つからず、とりあえずそう言っておいた。 「それにしてもこのお店、なかなかセンスいいね。オレに似合いそうなものってあるかな?」 綺麗に並べられた棚の上へ目をやると、床、天上ライト、とにかく店内全体まで拘って作られている様子に改めて気づいた。 「そうでしたね、僕、絶対に似合われると思うもの一つあるんです」 目をキラキラとさせると、サッと立ち上がった。 オレはまた、身長の差を感じてしまった。 オレは175cm高い方だ。 しかし、コイツあと10cm以上は高いな。 オレは基本的に負けず嫌いだ。 努力でどうにもならない事でさえ、この負けず嫌いが発動するのだ。ある意味、この無駄に負けず嫌いで人生を勝利している。 だから、まぁ、無駄ばかりでも無い。 オレは何と言っても28歳に歳にして10店舗を有する会社のオーナー兼社長だ。 大学卒業と同時に起業して、かれこれ5年。 必死で走り抜いて今がある。そしてこの余裕だ。 しかし、負けず嫌いのせいで、なかなか現状に満足できず、常に上を目指している。オレに満足できる日なんて来るのだろうか? しかし、とりあえず成功者という自信だけはしっかり持っているのだから、まぁ、救われるな。
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