夕立ちと少女と小さなお願い

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(……?) 流れの速い濁った水の中、藻のようにユラユラと揺れているそれに顔を近づける。 「これって、人形? ストラップかな?」 水が汚いせいではっきり見えるわけではないけれど、形状的に考えてそんな雰囲気がある。 「これ、あなたの?」 まだ腕を離さない少女へ振り返り訊ねると、コクリと頷く。 (遊んでて落としたのかな……) 大切な物なのだろう。 きっと、これを回収したいと悩んでいた矢先に夕立ちが降り、完全に困り果てて立ち尽くしていたと、そんな真相だったのではなかろうか。 (指さしてまで訴えてきたってことは、取れってことだよね) ちょっと抵抗はあるけど、できない頼みでもない。 雨水の中へ手を突っ込み、あたしは目的の物を掴みあげる。 手にしたそれは、ピンク色をした鞄に付けるタイプの小さなうさぎのストラップ人形。 ラッキーなことに、側溝の中に生えていた雑草に紐の部分が引っ掛かり流されず済んでいたらしいそれを無事確保し、少女へと差し出した。
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