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びしょびしょになってはいるけど、そこまであたしにどうこうする義務はないだろう。
差し出したうさぎの人形を大切そうに受け取り、自分の胸元へ押し付ける少女。
「それ、大切な物だったの?」
問うと、少女はやっと顔を上げ大きく首を縦に振ってみせた。
くりくりとした目と、ちょっと丸い小さな鼻。嬉しそうに笑う口元とほっぺはぷっくりしていて、歳相応の子供らしい、大人たちを無条件で笑顔にしてくれる可愛らしい笑顔がそこにはあった。
「なら、早くお家に持って帰って綺麗にしてもらいなよ。お母さんか誰かいるんでしょ? あなたも着替えないと本当に風邪引いちゃうからね」
優しくあたまをポンポンしてあげながらそう言って、あたしはほとんど雨を落とさなくなった空を見る。
明るさが戻ってきているし、もうこのまま天気は回復するだろう。
取りあえず、これで色々一安心。
そう結論を下しあたしも家に帰ろうかと思ったけれど、どういうわけか少女はまだあたしの右手を離してはくれていない。
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