夕立ちと少女と小さなお願い

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位置的に届かないのは明白だったので、押してくれと言いたいのだろう。 正直このままおさらばしたかったけど、たぶん世の中のモラルとしてはいけないことなのかもと思い、仕方なくあたしも家の前に立ち代わりにインターホンを鳴らしてあげる。 そして、大きく深呼吸。 保護者が出てたら、どう話を切り出せば良いのか。そんなことを考えながら反応を待っていると、すぐに中から返事が聞こえてきた。 同時に、近づいてくる足音。 「……ねぇ、ちゃんとあなたもあたしのこと説明して――あれ?」 隣に立つ少女へ顔を向け話しかけようとしたあたしは、一瞬頭の中がポカンとなる。 たった今までここにいた女の子がいない。足元に、ずっと大事に握り締めていたうさぎの人形が落ちているだけ。 「え? 嘘、勝手にどこ行ったのよ……」 物言わぬ人形を拾い上げ、周囲を見回すも少女の姿は見当たらない。まさか、またどこかに行ってしまったのか。
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