夕立ちと少女と小さなお願い

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           ◆ ――八月の蒸し暑い夕方のことだった。 (夏休みなのに毎日部活部活……。こういうときだけは運動部なんか入んなきゃ良かったって後悔しちゃうなぁ) 朝早くから夕暮れ時まで、ほとんど隙間なく埋め尽くされた部活動と言う名のスケジュールにため息をつきながら家路を辿っていたあたしの頭へ、突然冷たい雫が落ちてきて、それは瞬く間に数を増やし熱で乾いたアスファルトを黒く塗り替え始めた。 黒い雲が湧いてきた辺りで嫌な予感はしていたけれど、家に着くまでは持つだろうと余裕ぶっていた自分を叱りたい。 「……夕立かぁ。参ったなぁ、折りたたみ傘持ってきてないや」 一気に暗くなり雷鳴を響かせ始める空を見上げ独り言を呟くと、あたしはすぐ側に建つ潰れた商店の軒下へと走って避難する。 あたしが幼稚園の頃まではしわくちゃな顔をしたおばあちゃんがお店を開けていたのを覚えているけど、それがいつの間にか閉店し、人のいない廃屋へと変わり果てた場所。 入り口だったドアは汚れてくすみ、内側から引かれたカーテンを濁った色ように見せつけてくる。
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